出版社と書店
自費出版する上で、出版業界の慣習や業態の実際について理解しておくことは重要です。中でも最近注目されているのは、出版業界全体が不況に喘いでいる中、また海外のネット書店が幅を利かせる中、「取次」との関係性がどう変わるのかということです。出版業界は90年代にピークを迎えて以降、急速に縮小してきました。パソコン解説書の大手や思想系の寵児と目されていた出版社等も、次々と破産するに至っています。出版社はこの数十年、胡坐をかいていたわけではありません。経営努力は他業種と比較しても、言われるほど劣っていたわけではないのです。それにもかかわらず一向に振るわないのは何故でしょうか。
原因は色々考えられます。インターネットが普及したこと、娯楽が多様化したことも大きいと思われます。しかしそれ以上の阻害要因が、実は「取次」を介した「流通」にあるのだと指摘する人もいます。「取次」は出版社と書店との間に介在し、日本では2社のみでシェアの70%を占めています。確かに小さな出版社が自力で全国の書店に本を届けるのは不可能なので、取次が介在するのは至極当然とも言えます。消費者にとっても田舎に住みながら大抵の新刊を地元の書店で手に入れることができるため、大変便利なシステムです。また出版社が取次に支払う手数料も8%前後に止まっており、書籍代金に占める書店の上乗せ額や著者印税の方が割高です。では「取次」システムの何が問題なのでしょうか。
あまり知られていませんが、書店における本の値引きは認められていません。その代り、売れ残った書籍を出版社に返品することができます。この「売れ残り0保証」の制度によって、書店としては売れ残りのリスクを考える必要が無く、「品揃え」に専念できます。